書き散らかし

短編と呼ぶにも至らないやつ。

こないだの短編に出てきたレレ。

ほとんど描写ないけど顔はいいはず。

サイコパスだけど。

 

 

 事の発端は、あまり食べることに興味がない、とレレが言ったことだった。

「確かにあまり食べないのだろうな。お前の手首は細すぎる」

 男はそう言ってレレの手を掴んだ。その手が大きくて骨っぽいのが、レレには羨ましかった。

「大体、味音痴なんだ。何を食べても味の区別がつかない」

「ひとりで食事をすることが多いとそうなることが多いと聞くが」

「食事は家族でさせられた。遅れると叱られし食べるのが遅くても叱られた」

 レレはそう言ってそっぽを向いてしまった。そういう時に紙のように表情が消えるのが男は嫌いではなかったが、レレが黙ってしまうのは好もしくない。

「わかった、じゃあ今度試そう。俺と食べたら美味しいかもしれないぞ」

 そんな風に言っていたのを、レレも忘れてはいなかったのだが。

「おはよう。色々持ってきた」

 初めてこの部屋に現れたときと同様、男は唐突だった。

 綺麗な箱に入った舟形のお菓子やサンドイッチをレレはまじまじと見た。見たことのない食べ物ばかりだ、と思った。

「食べ物じゃないみたいだ」

「そんなことはない。ちゃんと食べられる」

 そう言って、男は白いケーキをひとつ指で摘みあげて、自分で食べて見せた。彼が何かを食べるのを見るのは初めてだったが、レレはそれが嫌いでなかった。

「俺に味がわかるかな」

「不安なら」

 男は布を取り出して、レレに目隠しをした。

「見えない方が、味はよくわかる」

 何だか妙な気がしたが、大人しく男が口元に運んでくれる菓子を一口食べた。甘い匂いと、男の指の匂いが混じっていた。

「……胡麻のあじ?」

「そうだ、当たりだ。好きか?」

「美味しいと思う」

「そうか」

 男が心から嬉しそうな顔をするのが目隠し越しにもわかって、レレもすこし嬉しかった。

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