ハロウィンだった

大体年がら年中ハロウィンみたいな話ばっか書いてる気がする。

本当はこのブログ、毎日こんくらいの感じで創作文章を書こうと思って始めたんですヨ。

全然書いてないですけどネ。

続きから、なんかハロウィン小噺。猫町四丁目のひとたち。

 

 

化ける夜

 

「いい加減ふくれるのやめろって。そんな顔してると、ますます本物の猫みたいに見えてくる」

 周がそう揶揄しても、聖一は細面の美貌を思い切り歪めてぷいとそっぽを向く。目につくのは、その金髪の上についている猫の耳だ。これで毛繕いなんか始めようもんなら、と周が苦笑いをする。

「お前が町の人たちに何かしてあげられることなんて、こんな機会でもなきゃゼロなんだから。しっかりやれよ」

 仮装して町のお祭りを盛り上げる、という不思議な企画が持ち上がったのは今年が初めてだった。この町の年長者たちが柔軟なのは知っていたつもりだったが、これまた急な話だと周も驚いた。

「賑やかなのは悪いことじゃありませんもの。わたくしも、ずい分着ていないドレスがありますから、赤いシラップで血のしぶきみたいなのを拵えてみようと考えてますの」

 ひよ音までがそんなことを言い出して、ああもう町の空気がすっかり浮かれているのだな、と周はそれ自体には悪い印象は抱かなかった。

 が、聖一の方は、頭に猫の耳などつけさせられて先からずっと仏頂面をしている。それも、昔見世物小屋で化け猫を演っていた、という老婆が喜んで提供してくれた耳は、本物の狐か何かの毛を使ってやたら精巧に作られていて、殊の外聖一に似合っていた。『喫茶猫町』の窓際の一番いいソファ席を占領してさっきから窓の外ばかりを見ていた聖一が、ふいと周の方へ振り返り、口端を吊り上げた。

「……何だよ? なに急にニヤニヤして、気持ち悪い」

 周が眉を寄せてそう言っても、聖一は不遜に笑ってふんぞり返る。頭上の耳がぴっと揺れた、ように見えた。

「いいのか、そんな態度で」

 青い目を細めて、先までの不機嫌が嘘のようだったが、聖一は妙に楽しそうに続けた。

「お前らが変なことするから、本物が寄って来てる」

「……本物? なに、本物って」

 周がさっぱりわからずそう問うても、聖一はちらりと窓の外に視線をやっただけで、まただんまりのニヤニヤに戻ってしまった。

「何だよ……」

 窓の外では、浮かれた町を人々が忙しなく行き交っていた。ぼちぼち暮れ色に染まり、思い思いの仮装、魔女や、お化けや、狼や、遠い国の人食いの鬼やに姿を変えた人々はそこに溶け込んでいく。

「混ざってるぞ。せいぜい気をつけろ」

 歌う調子でそう言う聖一が、これから鳥を獲る猫の顔で笑った。

 

 

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